【やめどきが分からないのは仕組みのせい】パチンコ・スロットで脳とギャンブルの仕組みが起こす“勘違い”を解説

今日も「あと1回だけ」と思っていた

「そろそろ当たる気がする」
「流れが来てるような気がした」
「もうここまで来たら、出るまでやるしかない」

──そんな感覚、ありませんか?

実際に、僕も何度も思っていました。 冷静に考えれば、勝ち目がないとわかっているのに、 「次は当たりそう」と信じて、気づけば財布が空になる。

そんな経験は、とある仕組みがあるからです。

この記事では脳とギャンブルの構造による“勘違いを起こさせる仕組み”を解説します。

この記事で分かること
  • 脳の勘違いを引き起こす様々なバイアスを解説
  • サポートを受けたい場合の案内

無意識のうちに行動へとつながってしまう流れを知ることで、「自分が弱いわけじゃなかった」と納得できるきっかけになればと思います。

※本記事は筆者の個人的な体験と学習に基づいた内容であり、医学的・専門的助言を提供するものではありません。依存症に関する治療や支援が必要な場合は、専門の医療機関や相談機関に相談することをお勧めします。
詳しい情報やサポートを受けるには、 厚生労働省 依存症対策ポータルサイトをご覧ください。

STEP確認

この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP2-2」です。
シリーズの他の「STEP 2」記事もあわせて参考にしてみてください。

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目次

【結論】「脳の勘違い」がやめどきを奪っている

ギャンブルは、脳の「判断ミス」を誘発するように仕組まれています。

その代表が、“もう一回だけ”と思わせる錯覚です。

それは「自分が悪い」わけではなくバイアスと胴元が仕掛けた設計の掛け算で やめられなくなるよう仕向けられているのです。

「バイアス」とはある物事や状況に対する判断や認識に、特定の方向へ偏りが出ている状態を指します。「偏り」「偏見」「先入観」などと同義で、誤った判断や不公平な結果につながることがあります

助手:モンキー君

バイアスは時に正しくないことを絶対正しいと思い込んでしまうことに繋がります。

保全士:ひろのぶ

誤作動を誘うような設計なら、何度も同じエラーが出るのは当たり前。人間の脳も同じです。


【勘違い①】「ここまで来たら当たるはず」|サンクコスト効果

あなたはもうすでに何万円も使っている。
だからこそ「今さらやめたらもったいない」と感じてしまう。

これは、心理学で言う「サンクコスト効果」と呼ばれ、 失ったものを取り返そうとして、冷静な判断ができなくなるバイアスです。

ギャンブルでは、この感覚がとても強く働きます。

たとえば「今日はこれだけ」と決めていたのに…

「もう1,000円だけ!」
「あとワンプッシュ!」
「次の切りがいい回転数まで回す」
「よく300回転で当たるからここまで」

やめない理由を自分で作って続けてしまう。これが積み重なって、やめられなくなります。

保全士:ひろのぶ

設備でも「ここまで分解したなら、最後までやり切ろう」って作業、実は危ない。作業時間が無駄に感じて止めれなくなるんですよね。やめ時の見極めって大事です。

【勘違い②】「流れが来てる気がする」|認知バイアス

ギャンブルの当たりは、基本的にランダムです。 でも不思議なことに、当たりが集中すると“波”や“流れ”があるように錯覚します。

これは、「認知バイアス」と呼ばれ、脳が無意識に偶然の出来事に「意味」や「予測可能性」を与えようとするバイアスです。

判断や意思決定において、客観的な規範や合理性から逸脱する、つまり自分の経験や先入観で偏った根拠のない判断をしてしまうことです。

たとえば

「今日は引きが強い」
「この台、今は調子がいい」
「ラッキーカラーのおかげだな」

こうした根拠のない錯覚が、やめられない原動力になるのです。

ギャンブルの当たりはランダムなのに、脳がそれを「流れ」や「調子の良さ」と認識してしまうこれによって、ギャンブルの結果が「勝てる」や「必然」として誤って解釈されることになります。

実際には、胴元側が演出として“出ているように見せる波”を作っているだけ。 でも脳は「今だ!」と興奮してしまいます。

保全士:ひろのぶ

設備の修理でも、本当はランダムなのに、規則性があるように見えると、判断を間違えます。脳にも“似た誤作動”があるんです。

【勘違い③】「そんなに負けてる気がしない」|快感学習

ギャンブルでは、負けた金額よりも楽しんだ記憶の方が印象に残りやすくなります。

たとえば

「あの時あれば引ければ、惜しかった」
「このタイミングであの演出が熱かった」
「負けたけどあそこで止めとけば勝っていた」

といった印象の方が記憶に残りやすくなります。

これは「快感学習」と呼ばれ、体験した出来事が快楽と結びつくと、その記憶が強化されやすくなるためです。

つまり、

  • 小さな当たりも強く記憶
  • 負けた分は“ぼやけて忘れる”

この偏った記憶の積み重ねで、「そこまで負けてない感覚」になってしまうのです。

保全士:ひろのぶ

トラブル履歴も、“軽い異常”ばかり覚えてると見えにくい重大な故障を見落とす。人の記憶も同じで、印象でズレるんです。

【勘違い④】「今やめたら“確定負け”になる」|損失回避バイアス

ギャンブルでは、負けている時、勝負は終わってみないと分からない続けて、強制的に終わるまで自分で止められなくなる場合があります。

これは「損失回避バイアス」と呼ばれる心理効果で、人は得をするよりも、損をしないことのほうを優先するというバイアスです。

たとえば

「今ここでやめたら、“負け”になってしまう」
「予定していた1万使ったけど、残り1万で取り戻せばいい」
「まだ4時間あるから取り戻せる」
「取り戻すだけでいい」

そんな気持ちになったことはありませんか?

私たちは「100円得する喜び」よりも「100円失う痛み」のほうを2倍以上強く感じると心理学の研究でも言われています。

だから──

  • 「もう1回やれば戻せるかも」
  • 「今やめたら負け確定だから、あと少しだけ…」

といった心理になり、なかなかやめられなくなってしまうのです。

保全士:ひろのぶ

「今ここで止めたら損だ」と思って走らせ続ける設備、でも本当は一回止めて冷却したほうが逆に効率がいい。人も機械も、“冷静な判断”が命です。

【勘違い⑤】「損失が確定しているのに続けてしまう」|コンコルド効果

ギャンブルでは一般的に負けるように出来ています。つまり長期的に見れば「損失が確定している」ということ。

これはコンコルド効果と呼ばれる心理効果で、損失が確実に見えていても、これまでに投入した費用や労力を惜しんで、その投資を継続してしまう心理現象のことです。

たとえば

「今までのギャンブルの負け総額○○〇万を取り戻したい」
「ギャンブルやめてもいいけど今までの時間とお金がもったいない」
「ここでやめたら全部無駄になってしまう」
「ギャンブルをやっていた自分が間違っていたと認めたくない」
「勝てばギャンブルをやっている自分は無駄じゃない」

心のどこかにこうした気持ちがあるのかもしれません。

損失回避バイアスと似ていますが、違いとしては冷静に見たら損失が確定しているという点です。

読者の皆様

ギャンブルなのだから負けは確定していないだろ!

そう思うかもしれませんが、お店が儲かるわけですのでお客はお金を支払うわけです。

そしてお店は楽しませるというサービスを提供しているわけで、それに対する対価を払っているという仕組みですので基本的に損失が確定しているわけです。

助手:モンキー君

演劇を見に行って、それを楽しむサービスと本質は同じ!ギャンブルは参加型で、一握りの人が総取りする椅子取りゲームみたいなもの。

ギャンブルは「やめにくい設計」になっている

ギャンブルは単なる運試しではありません。

実際パチンコやスロットのようなギャンブルの舞台は、

プレイヤーが長期間プレイすればするほど、負けるように設計されています

そしてその設計の中で私たちの脳がついつい引き寄せられるのは、

「期待感」を維持させる仕組みが存在するからです。

【期待感①】パチンコやスロットの“確率設計”

パチンコやスロットの当たりは、基本的にランダムですが、実際に還元率は約80~85%であり、長期間プレイすればするほど損をする設計になっています。

還元率について

経営側が取り分を取った後にプレイヤーへ分配する%の事を還元率と言います。

還元率(払い戻し)という言葉を聞いたことがある方は多いのではないかと思いますが

還元率とは平均してプレイヤーの私たちが得られる利益率になります。

簡単に言うと100賭けて、何%が手元に返ってくるのかの割合です。

スロットの場合

スロットを例に話しますが、遊戯台の設定によって下記の差が生まれることが1つ、そして肝心の設定6など勝てる遊戯台がそもそもお店に置いていない可能性があることが負ける仕組みになります。

設定1
10600円(払い戻し) ÷ 28000円(投資)  = 負け額17400円 【37% (還元率)】

設定6
55000円(払い戻し) ÷ 12000円(投資)  = 勝ち額43000円 【460% (還元率)】

ちなみにこの計算では設定6を1台入れたことで還元率が高くなる為、パチンコ・スロットの還元率である80%程度に戻す為には設定1が9台必要になります。

1回あたりどれだけ勝てるかというと下記になります。

項目数値
1回あたりの期待値-11,360円(損)
10回やったときの期待値-113,600円(損)

さらに言うとこの還元率はあくまでも業界全体での数値ですのでそもそも行ったその店で設定6が存在しないなんてこともあり得ます。

スロットの場合でパチンコは違うだろうと思うかもしれませんが、還元率が一緒な以上は考え方は一緒です。ただそこでパチンコは還元率減らしてスロットに良い設定入れよう、などお店がしているかもわかりません。

どちらにせよ還元率が数値として出ている以上、ギャンブルを続けていけば、最終的にほぼ必ず負けるという仕組みと言えます。

負けているからこそ“錯覚①サンクコスト効果”や“錯覚④損失回避”が有効になります。

ギャンブルの負け額については下記記事で詳しく解説していますので良ければご覧ください。

【期待感②】演出による「勝てる気がする錯覚」

ギャンブルの魅力は、ただ単に確率に頼るわけではありません。演出が重要な役割を果たします。

たとえば各種リーチの演出で…

「当たりやすいゾーン」
「熱そうな演出」
「赤保留」
「金文字やカットイン」

このようなものが出てきますが、実際にはそれが出玉に直結するわけではありません。

これらの演出が、“出ているように見せる”ための仕組みです。

脳はそれを

「おしかった」
「流れが来ている」
「次こそは当たる」

と錯覚してしまいます。

波があるからこそ“錯覚②認知バイアス効果”が有効になります。

【期待感③】脳を支配する大当たり確立50%

脳は、“次は当たるかも”という予想し、期待感に強く反応します。

この期待感がドーパミンの分泌を促し、脳が報酬を期待する状態に引き寄せられます。

もっとも効果的にドーパミンを分泌させる大当たりの確率は50%ほどだということが研究で明らかにされており、毎回100%の確定演出のみより50%の方が依存しやすくなるということです。

たとえば

「魚群リーチ熱い!」
「赤保留きたぁ!」

このような状態で当たればそのままドーパミンが大量に分泌。当たらなければイライラしますが期待していた分だけドーパミンは分泌されていましたので、100%よりどきどきする頻度と、演出中の当たるかな当たらないかなと、どきどきする時間、そして当たった時の喜びが増し総合的に分泌量が大量となります。

1つの大当たりで3度美味しい仕組みに作られているというわけです。

この状態が続くことで、

「もう少しだけ」
「あと一回」

という衝動を引き起こし、ギャンブル行動を繰り返してしまうのです。

少しでも大当たりすることで“錯覚③快感学習”が有効になります。

保全士:ひろのぶ

そもそも“壊れやすい設計”、長く動かすほど壊れるのは当然。脳が暴走状態になって、やめれなくなるってそういう設計ということです。

まとめ:「脳の錯覚 × 負ける舞台」が続けさせている

ポイント
  • やめられないのは、あなたの意志の問題じゃない
  • 「勝てる気がする」勘違いは、脳のバイアスを利用したギャンブルの仕組み
  • トータルで負けても、“快感の印象”で気づきにくい
  • ギャンブルは長くやるほど負けてハマる“仕組み”になっている

※本記事は筆者の個人的な体験と学習に基づいた内容であり、医学的・専門的助言を提供するものではありません。依存症に関する治療や支援が必要な場合は、専門の医療機関や相談機関に相談することをお勧めします。
詳しい情報やサポートを受けるには、 厚生労働省 依存症対策ポータルサイトをご覧ください。

次回(STEP2-3)

次は「頭ではわかっているのにやめられない」その仕組みを解説します。

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でも今は、そう感じていたのは“思考の仕組み”が乱れていただけだったんだと気づきました。

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参考・出典

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