記録を続けると、“自分のクセ”が見えてくる
STEP1-1では「いつ・どんなときにやりたくなるか」を記録し、
STEP1-2では「感情・時間・環境などのトリガー(引き金)」を整理してきました。
この記録を見返していくと、あなた自身の「やってしまうパターン(=スイッチ)」が見えてくるはずです。
この記事では、ギャンブルに行きたくなる自分だけの「依存行動のスイッチは何か?」について、脳のしくみと依存傾向の視点から、一緒に考えていきます。
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP1-3」です。
シリーズの他の「STEP 1」記事もあわせて参考にしてみてください。
- STEP 1-1【依存行動:まずやるべきことは“記録する”】
- STEP 1-2【パチンコ・スロット依存衝動の“4つのトリガー”】
- STEP 1-3【パチンコ・スロット依存行動の“スイッチ”】 ←今ココ
- STEP 1-4【パチンコ・スロット依存の回路を止める】
- STEP 1-5【“やめる準備”の土台作り】
シリーズ全体の流れを確認したい方はこちら。
トリガーとは“単体の刺激”──でもそれだけでは動かない
たとえば:
- 帰り道にホールを見かけた(環境)
- 少しイライラしていた(感情)
- 財布に現金があった(条件)
──これだけなら、ギャンブルに行かない日もあるでしょう。
ですが、これらが「同時に起きたとき」だけ、なぜか足がホールに向かってしまう。
それが、あなたの「行動スイッチ」です。
トリガーが“組み合わさる”とスイッチになる
単体のトリガー | 単体では動かないことも |
---|---|
退屈だった | でも用事があれば行かなかった |
ATMでお金を下ろした | でも他の予定があれば我慢できた |
ホールを通りかかった | でも気分が良ければスルーできた |
👇
組み合わさった状態 | スイッチが入る瞬間 |
---|---|
退屈+ATM+ホール前を通過 | → なぜか吸い込まれるように入っていた |

単体では問題の出ない部品も、“ある条件が重なったときだけエラーを起こす”ってのは、現場ではよくあります。
だから保全士は「この組み合わせが危険」ってパターンを記録して、“再発防止”の設計に活かします。
人間の脳も同じです。あなたのスイッチ配線は、複数のトリガーが連動している構造です。
「スイッチ=自分だけの行動条件」が分かれば変えられる
自分の記録を見返してみてください。
きっとこんな傾向が見えてきます:
- 「この曜日・この時間帯が危ない」
- 「この感情+この場所のセットで毎回やられている」
- 「お金をおろしたあとが一番やばい」
この“行動スイッチ”を知るだけで、次からは気づけるようになります。
「あ、またこの状況だ。今やばいな」
この“気づき”があるだけで、行動の選択肢が生まれるんです。
スイッチは“無くせない”──でも「入りにくく」することはできる
ここで大切なのは、スイッチ(=依存行動の起動条件)を完全に消すことはできないという点です。
なぜなら、これまでに繰り返してきた行動は、すでに脳の回路として“配線”されているからです。
何度も使った道が舗装されて歩きやすくなるように、脳も「楽しかった」「気がまぎれた」といった経験と行動を結びつけて、そのルートを強化してしまっています。
たとえば:
- イライラしたとき → ギャンブルでスッキリした
- 暇だったとき → ギャンブルで刺激を得た
このような体験が何度も繰り返されることで、脳は「感情」や「状況」に反応して、自動的にギャンブルに向かうようになってしまうのです。これは“意思”ではなく“反射”に近いもの。
つまり、「もうこのスイッチを無くしたい」と思っても、一度できた配線は、ある程度残り続けます。
でも安心してください。「触れにくくする」ことは可能です。
- 配線は無くせなくても、「通電しにくく」することはできる
- トリガーが重なる場面を減らせば、スイッチが入りにくくなる
- 代わりに別の「快感回路」を作っていけば、徐々に古い配線は使われなくなる



保全の現場でも、誤作動が起きる配線を「絶縁」したり、「別のルート」に切り替えることで再発を防ぎます。
人の行動も、それと同じように見直していけるんです。
行動スイッチを“解除”するには?
スイッチがどこにあるのかが分かったら、あとはそのスイッチが入りにくい環境にしていくことが次のステップになります(STEP3以降で詳しく紹介)。
たとえば:
- 帰り道を変える
- ATMに行く時間をズラす
- スマホの通知をオフにする
- 給料日は予定を入れておく
こうした「スイッチに触れない工夫」が、行動変化につながっていきます。
まとめ:トリガーを組み合わせると“あなたのスイッチ”になる
- スイッチ(依存行動の起動条件)は、「感情・状況・環境」の組み合わせで作動する
- スイッチを完全に消すことはできない
- 繰り返された行動が脳の回路として記憶されているため
- でも、スイッチが「入りにくい状態」は作れる
- トリガーの組み合わせに気づき、環境や習慣を調整することで回避が可能
- 記録を続けることで、自分だけの“危険な組み合わせ”が見えてくる
次回(STEP1-4)
次は「書くだけで脳の暴走が止まる?“見える化”の力」について解説します。
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参考・出典
- 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html