ギャンブルをやめるには“没頭できることを定着させる”ことが大切
「やる気が続かない」
「代替行動を決めたけど、すぐに飽きた」
そんな悩みを感じたことはありませんか?
特にギャンブル依存の場合、脳が「すぐに強い快感を得ること」に慣れているため、
新しい行動を続けるのは普通よりハードルが高いとされています。
だからこそ、「まずやってみる」だけでは足りない。
続けるための「仕組み」を意識的に作ることが大切なのです。
この記事では、代替行動を習慣するために大切な3つの仕組みをを解説していきます。
- なぜ「まずやってみる」だけでは続かないのか
- ギャンブル依存の脳に新しい行動を定着させるコツ
- 続けるために必要な「報酬・気づき・記録」の3つの仕組み
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP4-3です。
シリーズの他の「STEP 4」記事もあわせて参考にしてみてください。
- STEP 4-1【代替行動の目的とは?】
- STEP 4-2【代替行動を選ぶ】
- STEP 4-3【代替行動を習慣にするコツ】 ←今ココ
- STEP 4-4【代替行動が続かない】
- STEP 4-5【代替行動を始める準備】(STEP4まとめ)
シリーズ全体の流れを確認したい方はこちら。
【理由】まずやってみようだけでは足りない
代替行動や趣味を作るには「まずやってみよう」という話をよく耳にしますが、これは半分正解であり、半分は間違いでもあります。
たしかに、最初から楽しさや達成感、リフレッシュできる感覚が得られる場合には、「まずやってみる」だけで十分かもしれません。
しかし、代替行動によっては、ある程度続けないとその楽しさに気づけないものも少なくありません。
依存脳は「すぐに報酬が得られない行動」に弱い
ギャンブル行動は、プレイした瞬間にドーパミン(快感物質)が強く出る「即効性」がありました。
一方、新しい代替行動は──
- 筋トレも
- 読書も
- 資格勉強も
すぐに快感が得られるわけではありません。
最初は「なんか違うな」「面白くないかも」と感じるのは、むしろ自然な反応なのです。
特にギャンブル依存の場合、脳の報酬系がギャンブルに強く結びついているため、他の行動に対して自然に興味を持つことが難しいと言われています。
更に、ギャンブル依存の人は、ブレーキが効かず、目先の報酬に飛びつきやすくなる傾向があることが研究で分かっています。
そのため、何の対策もせずに「とりあえずやってみる」だけでは、すぐに「つまらない」と感じて続かない可能性が高いのです。
「つまらない」と感じた時点でやめやすい脳回路になっている
脳は、快感を感じられない行動に対して「やめた方がいい」とシグナルを出す性質を持っています。
依存脳にとっては、ギャンブルに比べればほぼすべての行動が「刺激不足」に見える。
だから、「やってみただけ」では継続できないことが多いのです。
暇つぶしでは足りない
ここで大切なポイントがあります、それは、
👉 代替行動は、「ただの暇つぶし」ではいけない、ということ。
ここまでで解説したように、私たちの脳は快感を求めています。
だから、新しい行動にも「報酬(得られる喜び)」が必要です。
ギャンブルと同じ「仕組み作り」が必要
ギャンブルは、演出 → 大当たり → 景品 → 快感刺激
という流れで、脳に「自動反応の回路」を作り上げてきました。
つまり──
たった1回勝ったから依存したのではありません。
「行動 → 報酬 → 快感」という流れを何度も繰り返した結果、
脳が無意識に反応する仕組みができあがったのです。
これと同じことを、今度は「自分にとってプラスになる行動」で作っていく必要があります。
代替行動を続けるための仕組み
報酬を用意する
報酬には大きく分けて2種類あります。下記を参考に報酬を用意していきます。
種類 | 内容 | 例 |
---|---|---|
内発的報酬 | 自分の内側から湧き上がる喜び | 楽しい、成長できた、達成感を感じた |
外発的報酬 | 外から与えられる喜び | お金が浮いた、褒められた、成果が見える |
仕組みの内容
代替行動を定着させるためには
- 「報酬」を得られる工夫
- 行動中に楽しさになど報酬に「気づく」仕組み
この2つを意識することが大切になります。
ただ始めるだけではなく、継続するための仕組みと、楽しさに気づくための工夫をセットにして取り組みましょう。
仕組み①:報酬を意識する
最初は、外発的報酬でもかまいません。
- 目標の回数こなしたら、新しい道具や本を買う
- 1週間続けられたら、好きなカフェでコーヒーを飲む
- スマホのチェックリストを使って達成感を可視化する
- (チェックするたびに脳が小さな報酬を感じる)
こうして「続けたら得がある」という感覚を脳にインプットしていきます。
そして、続けるうちに──
「健康になってきた」
「できなかったことができるようになった」
「楽しくなってきた」
など、自然と内発的報酬が育っていきます。
仕組み②:「気づきポイント」を仕込む
行動中や終わった直後に、意識的に「よかったこと」「楽しかったこと」を拾うようにします。
- 「やった後、ちょっと気分がスッキリしたな」と感じたらメモする
- 「思ったより集中できたな」「うまくできたな」と気づいた瞬間を言葉にする
- 「これ、意外と向いてるかも」と思えたら自分に言ってあげる
内発的報酬が育ってきても小さくて見逃してしまう場合があります。
気づける仕組みを組んでおきましょう。
気づきやすくなる視点リスト
下記リストは様々な視点で分類した参考になります。
- 【金銭的メリット視点】
- → もしギャンブルをやっていたら失っていたお金が、今日はそのまま残った。
- 【時間的メリット視点】
- → ギャンブルに使っていた時間で、今日は新しい知識をひとつ得られた。
- 【感情の変化視点】
- → 少しでも「楽しい」「スッキリした」「気分が違った」と感じたら、それは大きな一歩。
- 【身体的変化視点】
- → 外を散歩したら体が軽くなった/寝つきがよくなった、など体感の変化。
- 【スキル・経験視点】
- → まだ上手くなくても、今日「初めて〇〇ができた」という経験がひとつ増えた。
- 【未来への積み重ね視点】
- → 今日やったことが、半年後の自分の趣味や生活の選択肢を広げるかもしれない。
仕組み③:「記録」をセットで用意する
さらに「報酬」と「気づき」を忘れないために、シンプルな記録を残すと効果が続きやすいです。
- 1日1行、「今日やったことと気づき」をノートにメモ
- チェックリストアプリで達成日を記録
- 月末にまとめて「これだけできた」と振り返る
継続して行えてという記録は、達成感に繋がります。
そして内発的報酬が育ってきても振り返らないと気付かない場合があります。
楽しさは「見つけにいくもの」
重要なのは、楽しいことをただ待つのではなく、自分から拾いに行く意識です。
「今日は少し気分がスッキリした」
「昨日より集中できたかも」
「前よりうまくできた」
──こうした小さなプラスを、意識して見つけていくこと。
それが脳の報酬系を刺激し、ギャンブル以外の快感回路を育てていく鍵になります。
まとめ|仕組みで定着させる
ポイント
- ギャンブル依存の脳は「すぐに強い快感を得る行動」に慣れている
- だから新しい代替行動は「すぐに楽しい!」とは感じにくいのが普通
- 「まずやってみる」だけでは続かず、仕組み化が必要
- 単なる暇つぶしではダメ、「報酬」が得られる設計が必要
- 継続には3つの仕組みを用意するのが有効
- 仕組み①:報酬を意識する(外発的→内発的報酬へ育てる)
- 仕組み②:「気づきポイント」を仕込む(行動中・直後に良かったことを拾う)
- 仕組み③:「記録」を用意する(できたことを可視化する)
- 楽しさ・達成感を自動的に育てる仕組みを作れば、代替行動が自然と定着しやすくなる
このSTEPで分かること
- なぜ「まずやってみる」だけでは続かないのか
- 依存脳にとって、新しい行動には「工夫」が必要な理由
- 新しい行動を定着させるには「報酬・気づき・記録」の3つの仕組みが必要
- 継続できないのは「自分がダメだから」ではなく「仕組み不足」なだけだとわかる
- 仕組みを作ることで、脳の新しい快感回路を育てていけると理解できる
次回(STEP4-4)
次は「代替行動が続かない時、失敗してもよいこと」を解説します。
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「この世界は、生きづらいものだ」と思っていた過去があります。
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よければ他の記事も覗いてみてくださいね。
参考・出典
- 厚生労働省,依存症についてもっと知りたい方へ,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html - 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html - 厚生労働省,ギャンブル依存症の理解と相談支援の視点2025/4/23
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633402.pdf - 国立大学法人京都大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構ギャンブル依存症の神経メカニズム―前頭葉の一部の活動や結合の低下でリスクの取り方の柔軟性に障害―,2025/4/23
https://www.amed.go.jp/news/release_20170404-02.html