【ブレーキが効かない】パチンコ・スロットで制御不能になる前頭前野の“疲労と変化”

やめようと思っているのに、なぜ止められない?

「今日こそはやめよう」「もう行かない」と思っているのに──
気づけばギャンブルの世界に引き込まれてしまう。

これ、意志の弱さではありません。
実は、脳が「止まらない理由」を抱えているからです。

特に、前頭前野という脳の一部が関係しています。
前頭前野は感情や行動を制御する「ブレーキ役割」を担っているのですが、疲れたり、ストレスが溜まると、その働きが弱まります。

この記事では、ギャンブルをやめたいのにやめられない理由のひとつである、前頭前野の“疲労と変化”について解説します。

無意識のうちに行動へとつながってしまう流れを知ることで、「自分が弱いわけじゃなかった」と納得できるきっかけになればと思います。

※本記事は筆者の個人的な体験と学習に基づいた内容であり、医学的・専門的助言を提供するものではありません。依存症に関する治療や支援が必要な場合は、専門の医療機関や相談機関に相談することをお勧めします。
詳しい情報やサポートを受けるには、 厚生労働省 依存症対策ポータルサイトをご覧ください。

STEP確認

この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP2-3」です。
シリーズの他の「STEP 2」記事もあわせて参考にしてみてください。

シリーズ全体の流れを確認したい方はこちら。

前頭前野の疲労や変化が、理性を失わせる

前頭前野は、日常的に脳の「意思決定」や「感情制御」を行っている部分で、これが正常に働いている時は、理性で衝動を抑え、計画的に行動することができると言われています。

でも、疲れやストレスが溜まってくると、この前頭前野の働きが低下してしまうし、ギャンブル依存の場合はそれすら関係なく低下している状態になってしまうという研究結果があります。

その結果、「行動を抑える力」や「今、やるべきこと」と「やりたくないこと」を区別する力が弱まりってしまう。
これが「やめたいと思っているのに、やってしまう」現象に繋がると考えられています。

目次

前頭前野と衝動制御

前頭前野は、衝動を抑える重要な役割を果たしています。
これは「感情を制御する」ため、「今は我慢しておこう」と判断する脳の司令塔であり「ブレーキ」のような存在です。

例えば:

  • ギャンブルで負けたとしても、「今日はやめよう」と意志で決めた自分がいる。
  • イライラするのでギャンブルしようかな?・・・「いや、今日はやめておこう」

このように、前頭前野が正常に働いていれば、ギャンブルの衝動を理性で抑えることができます。

保全士:ひろのぶ

前頭前野は、まさにサーボモーターを制御するブレーキに相当。モーターの回転を制御する重要な装置です。

前頭前野の疲労が衝動を引き起こす

前頭前野の疲労が蓄積することで、脳は衝動的な行動を抑える力が弱まります。 ギャンブルをやめようと思っていても、自分の感情や欲求が優先されてしまうという現象が起こります。

正常に働いていれば抑えることができていたが、前頭前野の疲労がひどくなると、

  • 「もう少しだけやってみよう」
  • 「今日はギャンブルしちゃおう」

といった衝動を抑えられなくなり、結果的にギャンブルに手を出す、もしくは継続してしまうことに繋がります。

保全士:ひろのぶ

前頭前野は、サーボモーターを制御するブレーキ。そこが疲弊して機能しなくなると、モーターを制御できず、暴走しても止まれなくなるのは当然の結果です。

ストレスや疲労で、前頭前野の制御力が弱まる

日常的なストレスや疲労は、前頭前野の働きを大きく低下させます。
この状態では、意思決定がうまくできなくなり、理性をもって行動することが難しくなると考えられています。

更に脳は、ストレスを感じると、楽しい活動などを通して、ストレスを解消し、心身のバランスを取り戻すことを望むようになります。

そしてギャンブルは即座に快感を与えてくれるため、ストレス解消の手段として自動的に選ばれることが多くなると考えられます。

つまり、ストレスや疲労がたまった状態では“前頭前野の機能低下+ストレス解消を脳が望む”こととなり、

理性より感情が優先され、「やってしまう自分」を止めることが非常に難しくなると考えられます。

保全士:ひろのぶ

設備のメンテナンスを怠った状態がストレス過多の状態と言えます。日々のメンテナンスの重要性が見えてきますね。

長期間のストレスが与える前頭前野の萎縮

長期にわたって継続的にストレスを与え続けられると、前頭前野は萎縮すると言われており、萎縮すれば当然機能は低下すると考えられます。

つまり、ストレスや疲労がたまった状態が長期間続くと、常に前頭前野の機能が低下した状態になってしまう為、より一層理性より感情が優先されやすくなるということが考えられます。

ストレスから解放されることで前頭前野は回復していくらしいのですが、「強いストレス」を受けてしまうと回復が難しくなるとも言われていますので、日常的なストレスを減らすことも大切だと考えられます。

保全士:ひろのぶ

長期間酷使しすぎた設備は性能が摩耗などによって低下することがあります。そうなるとメンテナンスの為、休ませる必要があります。しかしメンテナンスを怠ると、そのまま破損してしまい取り返しがつかないことになるかもしれません。


ギャンブル中も前頭前野の働きが悪くなる

ギャンブルをしている時にも前頭前野の働きが低下します。
脳が「報酬」を求めて過度に興奮するため、ドーパミンの分泌が過剰になり、前頭前野の理性をコントロールする働きが鈍くなります。

その結果、ギャンブルの衝動を抑える力が弱まり、ギャンブルが続いてしまうと考えられます。

ギャンブルは、脳を“興奮状態”に持ち込む仕組みで設計されており、前頭前野の制御機能が低下しやすい環境を作り出します。

そのため、冷静な判断力を失い、行動が抑えられなくなってしまうのです。

保全士:ひろのぶ

故障しやすい「設計」になっているということですね。

ギャンブル依存症の前頭前野

研究の結果で、ギャンブル依存症患者の場合は背外側前頭前野の活動が低下していること、状況を理解し柔軟にリスクに対する態度を切り替える能力に障害があることが分かっています。

つまりギャンブル依存の人は前頭前野(ブレーキ)が、すでに効きにくくなっている状態ということになります。

参考:国立大学法人京都大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構ギャンブル依存症の神経メカニズム―前頭葉の一部の活動や結合の低下でリスクの取り方の柔軟性に障害―,2025/4/23
https://www.amed.go.jp/news/release_20170404-02.html

まとめ:前頭前野の疲労や変化が引き起こす衝動

  • 前頭前野は感情や行動の制御を担っている
  • ストレスや疲労でその働きが弱まり、衝動を抑えられなくなる
  • ギャンブルは興奮状態を作り出し、前頭前野を疲れさせる
  • 「やりたい」という衝動が強くなるのは、前頭前野の機能低下が原因の一つ

これらを理解することで、「やめられない自分」への理解が深まります

※本記事は筆者の個人的な体験と学習に基づいた内容であり、医学的・専門的助言を提供するものではありません。依存症に関する治療や支援が必要な場合は、専門の医療機関や相談機関に相談することをお勧めします。
詳しい情報やサポートを受けるには、 厚生労働省 依存症対策ポータルサイトをご覧ください。

次回(STEP2-4)

次は「依存のルートが強化される」その仕組みを解説します。

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参考・出典

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