やめなきゃいけない理由より、「やめて得する理由」を見よう
「もうやめなきゃダメだ」と頭では分かっていても、なかなか動けない。
でも実は、“やめなきゃ”では行動のやる気は続きません。
行動のエネルギーになるのは──
「やめたら、これだけ得をするんだ」という“見える成果”です。
この記事では、ギャンブルに「行きたくなる環境」を「行きたくならない環境」に変える為に「今やめたら手に入るもの」を数字やイメージで“見える化”して、 意思ではなく“納得と期待”で動けるようにしていきます。
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP3-5」です。
シリーズの他の「STEP 3」記事もあわせて参考にしてみてください。
- STEP 3-1【依存回路“物理的トリガー排除”】
- STEP 3-2【気持ちを整える“心のケア”】
- STEP 3-3【やりたい衝動を止める“ブレーキ”】
- STEP 3-4【依存回路の“人・感情・生活トリガー排除”】
- STEP 3-5【モチベーションを高める】 ←今ココ
- STEP 3-6【環境を整える】(STEP3まとめ)
シリーズ全体の流れを確認したい方はこちら。
【結論】行動のやる気・モチベーションには“報酬”が必要
私たちが自然に動けるのは、「楽しい」「得する」と脳が感じたとき。
「やめなきゃ」だけではモチベーションが続かない理由です。
さらに得するイメージを頭の中で考えるだけでなく、 “実際に見える形”にすることで、
より意識しやすくなり、やる気は自然に湧いてきます。
【説明】モチベーションの生み出し方
やる気とモチベーション
まずこの違いですが、やる気は欲求を満たそうとする瞬間的な気持ちであるのに対し、
モチベーションは将来に向けて欲求を満たそうとする持続的な心構えと行動を意味しています。
モチベーションが高いから、やる気が出やすくなると言えます。
モチベーションが生まれる理由
人間のモチベーションには「内発的」と「外発的」の2種類があります。
内発的動機付け
- 「自分の内側から湧いてくるやりたい気持ち」が原動力
- 例:好奇心、楽しさ、達成感、自己成長への欲求
外発的動機付け
- 「外から与えられる報酬や評価」が原動力
- 例:お金、称賛、昇進、怒られたくない、褒められたい
基本的にはこの二つがモチベーションが生まれる理由と言われており、
報酬とは物理的な金銭以外にも多々あるということです。
「やめなきゃ」が続かない理由
下記は興味を対象としたとある研究の結果で、興味はモチベーションに繋がるものです。
モチベーション(興味)の順位
- 好奇心が満たされるから、楽しいからやる
- 価値があるからやる
- 褒められるからやる
- しておかないと不安だから(○○するべき、○○しなければならない)
この場合ギャンブルは楽しいからやる1位、それに対してやめなきゃいけない理由は4位になり、やめるモチベーションが低くなる理由です。
そもそも「やる気」は行動した後に湧いてくる
多くの人が「やる気が出ないから行動できない」と感じていますが、実際は逆です。
やる気とは、何かしらの行動を起こした“あと”に、脳内で生まれる現象と言われています。
これにはドーパミンと呼ばれる「報酬系」の神経伝達物質が関わっています。
「やったら得する」
「達成したら嬉しい」
という期待感・快感を生みだすものが報酬となり、脳がそれを知らないとやる気は出てきません。
だから「やる気を上げてから」ではなく、まず行動して報酬に何があるのかを脳に教えることが重要ということになります。
これは自分が知っていても意味はなく、脳に教える必要があります。
そしてその仕掛けが「今やめたら手に入るもの」を数字やイメージで“見える化”して、意思ではなく“納得と期待”で動けるようにすることとなります。
次は、実際の対策を解説していきます。
【方法】金銭的メリット①:「未来資産」として見える化する
ギャンブルに使っていたお金、1ヶ月でいくらか思い出してみてください。
仮に1日5,000円、週3日で通っていた場合──
- 週:15,000円
- 月:60,000円
- 年:720,000円
- 5年で…360万円!
💡このお金でできること
- 海外旅行に年1回行ける
- 貯金+投資で将来に安心を持てる
- 車の頭金や引っ越し資金にも
- 大切な人へのプレゼントや親孝行にも使える
この「使わなかったお金」は、未来の自分を助ける報酬資産です。
【外発的報酬:目に見えるリターン】
ポイント
すでに使ってしまった金額に目をむけるのではなく、これからに目を向けてください。
STEP 2-2【パチンコ・スロットやめどきが分からない】 で解説した、
「サンクコスト効果」と呼ばれる、 失ったものを取り返そうとして、冷静な判断ができなくなる傾向や、
「損失回避バイアス」と呼ばれる、人は得をするよりも、損をしないことのほうを優先するという傾向により、
ネガティブな気持ちになりやすくなります。

設備のロス金額は重要です。その金額が少なければ働く私たちにも多く還元されますから。ロス改善をする時に、新規導入の時点で対策しとけばもっと儲かったのに・・・、なんてことは考えません。それより次の設備導入時には改善を活かそうと考えます。
【方法】金銭的メリット②:「欲しいものリストを作成する」
一度自分の「欲しいものリストを作成」してみることで、ギャンブル以外に目を向けるきっかけになります。
- いま欲しいもの
- 昔欲しかったもの
ここでのポイントはギャンブル1日で使う金額以下になるように設定することです。
一石五鳥になる
ここで作成したリストには下記の効果があります。
- 【きっかけ】ギャンブル以外に目を向けるきっかけになる
- 【ブレーキ】1日やめればこれだけの物が買えると、天秤にかけることでギャンブル衝動を抑えるブレーキになる
- 【学習】本来の正しい価格設定のものを正しい金額を払って交換するという経験ができる
- 【やる気】同時に欲しいものを手に入れたいというモチベーションにも繋がる
- 【満足感】欲しい物を手に入れることで満足感が満たされギャンブルに行かなくても良くなる
リストにするだけでこれら一石五鳥になる効果を得られます。



ギャンブル依存症である昔の私は物が欲しい時に「勝ったらこれ買おう」といつも考えてました。もしくは増やしてあぶく銭で買おうなど。



この欲しいものを買う行為は満足感が得られるためギャンブルをやらなくても平気だったりする簡単な手段になるよ!
【方法】金銭的メリット③:「達成したら○○を買う」
上記リストの続きですが「1日や1週間、1ヶ月達成できたから○○を買う」というご褒美を設定します。
ご褒美は正しく使えば脳を「成功=快」と結びつける最高の戦略になります!
- 1ヶ月禁ギャンブル達成! → 自分に新しいスニーカーをプレゼント
- 1日やめられた! → ちょっといいカフェで贅沢モーニング
- 記念に、理想の未来をイメージできるグッズを購入(貯金用のかわいいポーチなど)
有効な理由
- 短期目標+明確なご褒美をセットにすることで、脳が「達成=快感」と結びつきやすくなる
- 「とにかく我慢するだけ」だと脳が途中でモチベーションを失いやすいが、「達成したら報われる」があると頑張れる
- 小さな成功体験(まずは1週間クリア)が、次の行動エネルギーになる
ポイントと注意点
- ご褒美は「過去の習慣を思い出させない物」が望ましい
- 例:新しい趣味道具、カフェでゆっくり、服を買う など
- × ギャンブルを連想させるような「賭け系アイテム」や「ド派手な消費」は避ける
- できれば「自分を大切にする体験」や「未来につながるもの」を選ぶとさらに効果的
- 「買ったあとどう感じたか」をしっかり味わうと、脳にポジティブな強化学習が起きる



1週間でプチご褒美でも全く問題ありません。欲しいものを決めておくのも良いですが、○○円分好きなもの買うなどすると、何買おうかなと考えが続く=期待感がずっと続くのでおすすめです。私はDIYをやっていたので、その部品をアマゾンでずっと見ていました。
【方法】時間的メリット:「成長時間」として見える化する
ホールにいた時間も、実は大きな財産です。
仮に週3日 × 3時間 通っていたとしたら──
- 週9時間 → 月36時間 → 年間432時間(約18日分)
💡この時間でできること
- 筋トレやウォーキング → 健康と体力アップ
- 読書や勉強 → スキルアップや資格取得
- 家族と話す時間が増える
- 趣味に打ち込める
- 睡眠や休息にあてて体調も整う
ギャンブルをしない時間は、未来を変えるための成長時間です。
【内発的報酬:自己成長・自己肯定感の強化】



設備のロス時間は重要です。その時間があればより多くの生産が可能となりますから。私たちも普段から時間が無いと考えていますが、何かをやめることで生まれる時間は積み重なると膨大です。
【方法】心の余裕・感情的:「満足感」として見える化する
ギャンブルをやめることで、お金や時間だけでなく、心の中にも余裕が生まれます。
- 罪悪感や後悔が減る
- 家族や大切な人との関係に自信が持てる
- 「自分を裏切らなかった」という達成感がある
- 小さな選択が“自信の種”になる
感情の安定と満足感の積み重ねが、内側からの強い報酬になります。
【内発的報酬:達成感・誇り】



私たち保全士は設備を安定稼働させることに誇りをもって仕事をしています。それと同じで金銭・時間以外でもやめることで得られるものを見える化してみましょう。
【方法】報酬を「見える化」:モチベーションを湧かせる仕掛け
得するイメージを頭の中で考えるだけでなく、 “実際に見える形”にすることで、より意識しやすくなり、モチベーションは自然に湧いてきます。
見える化の具体策
- 紙に「1ヶ月で●円浮く」と書いて貼る
- アプリで使わなかったお金を記録していく
- カレンダーに“やめた日”を記録(見返すと励みになる)
- 理想の未来の写真(旅行・貯金通帳など)を壁に貼る
モチベーションは気合を入れることではなく、「報酬を思い出せるきっかけ」があってこそ続きます。



工場では目標は一目で見て分かるところに貼っておきます。目標達成することで自分はやりきったぞ!と満足感に繋がります。その目標が自分の欲求と直結すればするほど効果的でしょう。
【注意】SNSでギャンブルをやめる仲間を作ることはオススメしません。
目標に向かって進む仲間はモチベーションの維持に繋がりますが、今回のような依存症の場合は話が別になります。
なぜなら依存症の場合はやめてなくてもやめたと嘘をついてしまう可能性があり、それが自分を苦しめることに繋がります。また目的が仲間との交流に変わってしまい、本当にやめたら仲間から離れることになる。
ギャンブルをやめる仲間のつもりがギャンブルをやめると慰め合うって関係に依存することになります。
【サポート】自助グループとの違い
自助グループといった集団での依存症回復に向けて活動しているサポートでは、ギャンブルをしてしまったことを正直に話すことや、してしまったことを否定しないところから始まり、経験の共有や対策を一緒に考えることでともに成長していきます。
ですがSNSでは否定や足の引っ張り合いなど平気で行われる可能性があり、本来は根性論で依存症を抜け出すことは良くはないと自助グループでも考えられていますが、そういった知識のない人には依存症になるのは根性が無いと考えている人もいます。
仲間が全員一定以上の知識を持っているのであればオススメできますが、SNSといったツールではそれも期待できませんし、逆効果になる可能性の方が高いため私はオススメしません。
【まとめ】報酬を戦略的に用意して、モチベーションを「湧かせる」
今回の内容を全て実践する必要はなくて、あくまでこれだけ自分にとって「報酬になりえる」ものがあるよと、探しやするなるように色々書きました。
ポイント
- やめなきゃいけない理由より、「やめて得する理由」が大切
- ギャンブルをやめることで、「お金・時間・感情・自信」が取り戻せる
- 我慢ではなく、「自分への報酬」として考える
- “得する理由”を見える化することで、自然とやめる選択がしやすくなる
これらを意識して、“未来の自分”にリターンを与え続ける仕組みを作ることが、やめるための本当のモチベーションになります。



故障や無駄を減らすだけじゃなく、機械は“利益”や“効率”が上がる仕組みが無いと工場が経営困難で維持出来なくなるため重要です。
人も一緒。「やめる理由」じゃなく「やめたら得する未来」が、モーターのように前へ進める力になるんです。
次回(STEP3-6)
次は、STEP3のまとめになります。
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- STEP 3-5【モチベーションを高める】 ←今ココ
- STEP 3-6【環境を整える】(STEP3まとめ)
シリーズ全体の流れを確認したい方はこちら。
このサイトが大切にしていること
「この世界は、生きづらいものだ」と思っていた過去があります。
でも今は、そう感じていたのは“思考の仕組み”が乱れていただけだったんだと気づきました。
このサイト「脱出思考」では、機械保全士として培った現実重視の“整備の視点”をベースに、脳科学や心理学の知識、そして僕自身の体験をもとに、思考や感情を“仕組み”として捉えるヒントをお届けしています。
よければ他の記事も覗いてみてくださいね。
参考・出典
- 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html - 楠奥繁則 (2004)。 職場におけるストレス・マネジメントの探究.立命館経営学, 42 (6), 115-133.
https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/record/694/files/be42_6kusuoku.pdf - 岡田涼, & 中谷素之. (2006). 動機づけスタイルが課題への興味に及ぼす影響 自己決定理論の枠組みから. 教育心理学研究, 54(1), 1-11.
https://doi.org/10.5926/jjep1953.54.1_1