「意志の力」でやめるのは、なぜ難しいのか?
「もう行かないと決めたのに、またやってしまった」
「今日こそ我慢しようと思ったのに気づいたら…」
──そんな経験、ありませんか?
それは、あなたの“意志”が弱いせいではありません。
脳には、過去に得た快感を記憶し、その記憶に基づいて自動的に行動を起こす仕組みがあるからです。
この記事では、そうした“脳のクセ”に気づき、記録と見える化によって暴走回路を制御する方法をお伝えします。
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP1-4」です。
シリーズの他の「STEP 1」記事もあわせて参考にしてみてください。
- STEP 1-1【依存行動:まずやるべきことは“記録する”】
- STEP 1-2【パチンコ・スロット依存衝動の“4つのトリガー”】
- STEP 1-3【パチンコ・スロット依存行動の“スイッチ”】
- STEP 1-4【パチンコ・スロット依存の回路を止める】 ←今ココ
- STEP 1-5【“やめる準備”の土台作り】
シリーズ全体の流れを確認したい方はこちら。
脳の“報酬回路”は、意志より早く動く
ギャンブルで当たったときの快感。その記憶は、脳の報酬系(ドーパミン回路)にしっかり刻まれています。
- イライラしているとき
- スマホでホールの広告を見たとき
- 給料日でお金に余裕があるとき
こうした場面で、脳は過去の快感を呼び出し、「またあれを味わいたい」と無意識に命令を出します。
書くだけで脳の暴走が止まる?──“見える化”の力
ここで効果的なのが、記録による見える化です。
ただ記録するだけで、無意識の自動運転から「自分で選べる状態」へと変わっていきます。
具体的には:
- やりたくなった状況をメモする
- 感情を言葉にして書き出す(例:「ストレス」「退屈」「孤独」など)
- どんな出来事がスイッチになったかを記録する
このようなアウトプットによって、理性をつかさどる脳の前頭前野が活性化し、衝動をコントロールしやすくなります。
補足
心理学でもこの効果は「ラベリング効果(言語化によって感情が弱まる)」として知られており、感情を言葉にすることで、その強度が弱まることが分かっています。また脳科学的にも、「前頭前野(理性的判断を担う部位)」が活性化することで、衝動をコントロールしやすくなるとされています。

機械の現場では、異常が起きた時点で記録を残し、再発を防ぐのが基本です。
何が起きたのかを見える化=可視化するだけで、次に備えることができます。
人間の行動も同じです。
行動や感情を「点検表」として残しておくことで、次に同じスイッチが入りそうになったときに、気づいて対処する準備ができます。
見える化しておくべき3つの項目
項目 | 内容例 |
---|---|
① やりたくなった日とその理由 | 「雨で外に出たくなかった」「人間関係のストレス」など |
② スイッチになった出来事 | 「ATMに寄った」「一人きりで過ごしていた」など |
③ 乗り切れた日と方法 | 「散歩に出た」「本を読んで気をそらせた」など |



これをノートでもスマホのメモでもOK。とにかく“見える場所に残す”ことが大切です。せっかく点検しても「点検表」が見当たらないのでは意味がありません。
「意思」ではなく「仕組み」があなたを守る
人間の脳は、「やめよう」とする意志よりも、習慣化された回路を優先して動くようにできています。
- 我慢しようとすると反動がくる
- 忘れようとすると、かえって意識が向いてしまう
だからこそ、意志の力で抑えるよりも、構造化された行動パターンで対策する方が効果的で現実的なんです。
✅ 記録 → 気づき → 見える化 → 調整
この流れができていれば、「無理してやめる」ではなく、「自然とやらなくなる」状態に近づいていけます。
まとめ:これは“終わり”じゃない。気づけた今が“再設計”の始まり
あなたが今まで記録してきた内容は、自分の中にある無意識のクセ=回路図です。
それが見えてきた今こそ、どこを調整すれば良いかが見えてくるタイミング。
次は、その回路が暴走しにくい環境づくり(STEP2以降・STEP3)へと進んでいきます。
- 意志だけでやめられないのは自然なこと。脳の構造のせい
- 記録による「見える化」で、行動回路を制御できる
- 感情やトリガーを言語化することで、前頭前野が働き、衝動を抑えやすくなる
- 無意識のクセを可視化すれば、行動を“選ぶ”ことができるようになる
次回(STEP1-5)
次は、これまでの記録、トリガー、スイッチ、可視化のステップをまとめて振り返りながら、次のステップ=“誤作動の原因を理解して防ぐ”フェーズに進むための準備をしていきます。
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参考・出典
- 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html